愛の暮らしている世界は我々の世界に似ているが、荒廃が進んでいて暴力がはびこっている。そんな中、母親の死をきっかけに小学6年生の愛は、別れた父親を探しに旅に出る。旅の途中には、彼女を困らせたり苦しめたりする出来事が絶えないのだが、入れ替わるように彼女を助けて応援する、人や犬が現れて、不随になった彼女の左腕を守るように、彼女の左側に寄り添ってくれる。愛には犬の言葉がわかる、という特殊能力がある。
荒れ果てた世の中だけれども彼女を支えようとする光は消えていない、という世間の救いと、そして彼女に対する救いが共鳴して、読んでいてとても救われる。ジュブナイルなので読みやすい。
筒井康隆の得意のドタバタは控え気味になっている。助けてくれる人はいるものだ、というメッセージは大人の自分にとっても勇気づけられるし、章ごとに支えてくれる人が入れ替わって読みやすい。
愛と一緒に旅に出てみてはどうか。
毎日が単調でつまらなくなってきている人にオススメしたい。