このタイトルは既に美しいのだが、なぜこのタイトルなのだろうという疑問をずっと抱きながら映画を見ることになる。
そしてそれは映画の終わる10秒前に暗示される。阿部サダヲの演じる陣次の、誰かを大好きだ!、という気持ちのことを、鳥、と解釈して映画を見ることができるようになるまで。
Amazon動画のレビューによると、主人公の十和子はカラス以外の鳥に気付かない、としていたらしい。なので、カラス以外の鳥もいるのだ、そしてそれはきっと、彼女のことを普通に愛してくれる男たちのことだ、と解釈することもできる。が、最後のシーンでの鳥たちの登場の仕方で、映画化の中でもっと違う意味を与えるためのアレンジが加わっている。
二人の演技の隙のない素晴らしさ。
一応見ておくか、という気持ちで見始めたのだけれども、これは見ておいて良かった。誰かを好きになる、って、何て幸せなことなんだろう、と、いう感想を少し苦々しい気持ちで味わうことができる。
こういう映画は多くはない。
好感を抱ける人物が一人もいない。だが、それが何故だかそのせいで映画を見るのがやめられなくなった。
原作では陣次はかなり深刻な病気を抱えている、という設定らしい。映画でも咳き込むシーンはあったけれど、特に病院に行くシーンもなく、それをほのめかすこともない。
でもその方が、陣次の純粋さがより際立って、見終わったあとで爽やかだ。これで良かろう。
お正月の賑やかでお祭りな感じに少し疲れたら、是非、見てみて欲しい。