佐武という岡っ引きと、市という目の見えない居合の達人が、江戸の時代を生きていく。身の回りには次次と血なまぐさい事件が後を絶たずにやってくる。捕物控なので、犯人を逮捕する話になるのだが、ほとんどの話で犯人は市に斬られて死んでしまう。
このマンガは、マンガというジャンルのアニメーションへの挑戦だ。ぎょっとするような実験的なコマわりが、読者の頭を揺さぶってくる。細かいコマ割り。かと思えば、いきなり見開き。コマを斜めに割っていったり、なにも台詞のないコマが数ページ続くこともある。実験的といえばそうなのだが、その表現の能力の高さと、それから計算の細かさで、感じたことのない読書体験を味わうことができる。
アニメーションにこれができるか!?
と、挑発しているかのようだ。
いやできない。
突然見開きになった時の絵に圧倒される感じ、細かいコマ割りがもたらす緊迫感、これは、いつも画面のサイズが同じにならざる得ないアニメーションにはできない。無音の世界を描くこともアニメーションとは相性がよくない。
1話見るたびに、そのやるせない物語と、そうして大きな江戸の時代の世界観に圧倒される。マンガと呼ぶよりも芸術と呼びたいのがこの読み物である。読んだあと、また絵を見たくなるような稀有な作品なのだ。