刑事コロンボは、昔、サラブレッドブックス、という出版社からドラマを本にしたものが出版されていてむさぼるように読んだ。30冊くらいかな。
その頃は刑事コロンボはテレビでもあまり放送していなかったので、刑事コロンボとの出会いは、ピーターフォークの名演を見る前の小説版だった。コロンボのような大人になりたいものだ、と思った。こういう「ロールモデル」のような大人がいると、思春期は安定すると思う。たとえ虚構の中の人であっても。今の世の中には、あまりこういう「素敵な大人」が出てくる話がないので、世の中がすさんでしまうのではないかと思ったりもするが、まあ、かといって自分も何もするわけでないのだが。
コロンボは、頭脳明晰で、ニコニコと人なつっこい、そして、決して威張らない、女性に優しい、そして最後には必ず犯人を逮捕する。
低姿勢で地味でおとなしくて人に馬鹿にされるのだけれども、頭脳で最後に結果をちゃんと出す、そういう大人になりたい、と思う中学生の自分も少し変わっていたかもしれない。
今の自分はどうなんだろう、近づけているかなあ。近づけてないなあ。コロンボは仕事で心を病んだり、睡眠不足になったりはしないだろうなあ。
この本はコロンボシリーズを書いていた脚本家のウィリアムリンクが、ファンサービスとして書き足してくれた小編集。短編集なのでこってりどっしりと、コロンボが犯人をじわじわと追い込んでいくあの味は楽しめないけれど、そうそうコロンボってこういうやつだったよね、という味はしっかり楽しめる。