筒井康隆は実験的な小説をたくさん出していて、文学の可能性というものを、さまざまなかたちて示している巨匠というべきSF作家だ。
その中の、くさり、という短編を読んだ。
この動画ばやりの昨今、どんな漫画や小説もみんな動画になりますよ、とでも言いたげなほどに動画は身近なものになっている。
が、この、くさり、は、映画化は無理だ。
この小説は一人称で語られていて、主人公の感じたことか小説の形で綴られている。
その主人公の少女は、目が見えないのだ。
つまり、動画にしたならば画面はずっと真っ暗なままになってしまう。
彼女はどこかの屋敷に住んでいる。母は屋敷にはいない。彼女の父は地下で秘密の実験に夢中だ。
ある日、彼女は勇気を出して地下室に進む。
そして、生き物の体を使ったと思しき実験に少しずつ触れることになる。
彼女の盲目を読者も一緒に味わうことになる。手探りで彼女の感じるものたちの気持ち悪さ、目の見えないことによる不自由さ、それを実験室の中で恐怖とともに味わうことになる。
小説だからこそ味わえる恐怖がそこにはあった。
面白かった!