風紋

外資系のソフト会社 コンサル職のおっさんの日々

竜とそばかすの姫

息子が大好きな映画は「サマーウォーズ」で、LINEのスタンプまで買うくらいのお気に入りだ。細田守が、またインターネットのバーチャル空間を舞台に作品を作ったのであれば、息子が気に入らないはずはなかろう、と思った。ので、予告編を見た時から映画館に連れていくことは決めていた。

映像が美しいだろうことは予告編で見えていたし、やはりインターネット世界を扱うのは細田守は得意なので、きっと面白い話を見せてくれるだろうと期待して映画館へツマと子供と三人で。50歳を過ぎてしまったのでちょっと安くなったとツマが言っていた。そうか、老齢を理由にして映画を安く見られる年になってしまったのか。


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美しさ、に、ただ溺れると良い。そういう映画だ。

高知の平凡な女子高生の心と体をスキャンして作った、アバターがベルである。彼女だけこういう美しいアバターになっている不公平がちょっと俺は気になったが、そのベルが心から歌うその歌声は心を震わせてくる。IMAXシアターの音響も手伝ってくれたと思うが、アカペラの彼女の歌に心がちんと静まるのを感じた。歌の続きを聞きたい。聴いていたい。そういう音楽だった。そして細田守の描く画像の美しさ、構図のよさ、どれもがうまく融合して、クライマックスの歌のシーンではまた不覚にも涙が。

本来ならば誰もやらないだろう行動を主人公はある目的のために、自己犠牲の精神で決死の覚悟でとる。その自己犠牲の気持ちのまっすぐさに感動する。その行為はインターネットをやっている人たちにとってはみんなが「タブー」だと思っている。この映画はインターネットをやっている人たち向けの映画だ。あの「タブー」を犯す彼女の勇気がわからなかったら、感動を取りこぼすことになるだろう。

息子も泣いちゃったと後で言っていた。

そう、アバターが綺麗なのは、その元になった「すず」という女子高生の心が美しかったからなのが、と映像は伝えてくれている。作中で誰もそんなことを解説したりしないところが嬉しい。映像に語らせている。アバターの力など借りなくても、そばかすだらけでなんとなく平凡な感じが漂っていたとしても、実はそんなことはどうでもいいのだと。

彼女は美しいのだ、と。

 

平凡な普通の高校生に見える主人公が実は数学の天才で世界を救った「サマーウォーズ」と、やはり平凡な高校生だが心に秘めている歌声で人々を魅了した今作は、やはりそういう意味で構造が似ている。

そして、やはりこういう作品が彼の手にはよく馴染むのではないかな。語り継がれるだろうアニメの名作がまた一つ生まれた。