映画の会で「雨」をテーマに紹介された作品。
この映画の存在すら知らなかったし、ネットでググっても雨関連の映画としては紹介されることはない。だがしかし、確かに重要なシーン(予告編でも少し出てくるが)で雨が降っている。この雨の中で交わされる男女の会話の中には、ほんとうの心の交流のようなものが感じられる。たとえ結ばれることはないとしても。
「あなたの顔の前に」
という変わったタイトルだが、幸福や天国は実はいつでも目の前にある。見えている世界が実は天国で、とても美しいのだ、ということをこの映画では幾度か語られる。だから主人公のインソクはいつもニコニコしているし、満たされた顔つきをしている。だがしかし、彼女がこれまでいつもニコニコしていたわけではなく、あることがきっかけなのだと映画を見ている途中でわかる。
シーンの数も少ないし特別なカメラワークもない。本当に誰でもこういう映画なら作れるのではないか、という気持ちにさせるのだが、女優さんの出しているリアル感が強烈でまったく芝居臭さがない。ドキュメンタリーを見ているような感覚で映画を見ているうちに話が終わる。
味わい深い余韻の残るいい映画だった。