風紋

外資系のソフト会社 コンサル職のおっさんの日々

景色に記憶を刻んで

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健康のため、と、持って行き場のない鬱屈を解き放つために散歩に出かけた。歩いて隣の駅まで行き、そこにあるブックオフで、安くなっている書籍を仕入れて慰めに読もうと思った。

この散歩道は川を横断するのだが、そのときの空がゆったりと大きく広がっていた。川上から川下まで視界を遮るものがなく、空はその大きさを誇るように広く、それを覆うように夕暮れ時の雲が広がっていた。圧倒的に大きなものを見ると、なんだか悩んでいたことが軽く感じられてくる。

 

この景色の中に鬱屈を抱えて歩いた今日が刻まれる。またこの道を歩くとき、なんだか救われた気持ちになったこの日のことも思い出すのだろう。幾層ものフィルターがこの景色にはすでに重なっていて、初めてこの道を歩く旅人とは、この景色の見え方がすでに同じではない。

震災でそこで生活することが困難になってしまった老人たちが、それでもそこから離れたくないと、苦労を受け入れて住み続けようとするのは、こういうことかもしれないと空を見て思った。その景色に自分の子供の頃に泣きながら歩いたことや、自分の子供が小さくて一緒に幸せに歩いた日のこと、などなどが数えきれないくらい染み込んでいるのだ。その景色が自分なのだ。

そこを離れることにした人たちの、自分の皮を剥ぐような気持ちでやったであろう決断に、勝手に思いを馳せたのだった。