風紋

外資系のソフト会社 コンサル職のおっさんの日々

あやうく一生懸命生きるところだった

 

韓国のハ・ワンという人が書いたエッセイを翻訳したもの。イラストレーターの仕事をはじめるために、会社を辞めた作者がやめる前に思っていたこと、そしてやめてから思ったことなどを通して、自分のやりたいことをして暮らすことの大切さについて語ってくれる一冊。仕事で疲れているので読んでみようかなと思ったのだが、そう考えるとみんな仕事で疲れていて「休みたい」と思っているので、このタイトルや表紙の絵は販売手法としてはうまくいっていると思う。

体験談や個人的な思いを面白く本にしているわけなので、宗教めいた深い話やお説教もないが、この作者個人の体験という枠を突破することはできずに、面白かったけれども参考にはならなかったなというのが感想。

仕事のために自分の時間と神経をすり減らすのは、一度しかない人生の過ごし方としてどうなのか、と問題提起してくれる。しかし、会社を辞めてまでして働きたいことがあるのかというと一般の人はそういうものはないし、経済的に難しくなれば心も追い込まれるし生活も窮屈になる。

働かないという選択肢を選んだ人が、自分がその選択肢を選んで良かったと思っているので、善意で呼びかけてくれていると思うわけだが、再現性がそれほど高くないので「こういう人もいるだろうな」という目線で読みたいと思う。

 

子育てとか、株取引とか、人間関係とか、うまくいった人の真似をしたいという人はいると思うので需要はあると思うのだが、最近、オレは「それって、あなたがうまくいったというだけだよね」と思うようになってしまっている。書いてあるとおりにすれば必ずうまくいくわけではないのだ。うまくいった人がよかれと思って自分がやったことを書いているわけだが、うまくいったことの原因の大半は「運が良かったから」ではないかと最近思うようになった。

再現性はあるのかなと疑いながら読むようになった。

そういう風に疑いながら読むようにするとビジネス書の大半は(たまたま)うまくいったことの振り返りのような気がする。

ただ一方で不思議なことに、うまくいかないことには偶然がないような気もしていて、こうしたら失敗したという話は襟を正して聞きたいと思うのだが、そういう本はあんまり出回っていない。