ツマがこう言った。
「エアコンをつけっぱなしにして寝たら、起きた時に肩こりしなかった」
寒いと無意識に身体がこわばるだろうから、そういうこともあり得そうだ。
オレはオレで、朝起きた時に布団から出るまでに、頭の中のネガティヴキャンペーンに苦しんでいる。「今の仕事続けられるのだろうか」
とか、そんな哀しい気分に毎朝のようになっているのだ。布団から出る時は地獄に赴く人のような、絶望的な気持ちになってしまっていた。
頭を冷やすと脳には良いようだが、冷たければ良いとも言えないかもしれない。朝、起きた時に死にそうに気分が暗いのは寝ていて体を冷やしすぎているから、かもしれない。
そんなわけで、試しに、温かい部屋でツマと布団を並べて寝てみることにした。オレが暑がりでツマが寒がりなので、別々で寝るのが良いだろうとして、長いこと違う部屋で寝ていた。しかし、起きた時に催すあのどうしようもない憂鬱が軽くなるのなら温かい部屋で寝てみたい。試してみよう。
起きた時に少し頭がこわばる感じがあった。それはいつもと同じだ。しかし、いつものような逃げ出したくて仕方ないような絶望感はない。悲愴感がない。土砂降りの雨から、曇天に変わったような変化だけれど。快晴には程遠いけれど、傘はもうささなくてよさそうた。布団から出るのも、温かい空気の中に出るのであれば、勇気も少なめで良い。
やらないとならないところまで資料の作成が片付いている、ということもあるだろう。これが大きいのは間違いない。
まあ、何が原因か、なんて追及しなくてもよかろう。哀しい気持ちが攻撃してこなかった、それだけで素晴らしい福音だ。ありがたい。ありがたい。今夜もリビングにツマと床を並べて眠ることにしよう、と思う。
他にも気づきがあった。
自分が寝ているところに他の誰かも寝ている、というのは、なんだかいいものだった。