風紋

外資系のソフト会社 コンサル職のおっさんの日々

血の轍

 

押見修造の漫画は「麻里は僕の中」「悪の華」を過去に読んだ。

「血の轍」は親子の温かい話かと表紙を見て思っていたのだけれど、とんでもなかった。母親の息子への行き過ぎた愛情が元になって起きる、異常な世界を描いた話だった。「麻里は僕の中」も「悪の華」も、閉塞した世界の中でそこから出たくても出られない人たちの話だったのだが、そして普通の男子が、普通でない女子に巻き込まれて、とんでもないことになる、という構造は同じなのだが、絵がうまいので説得力があり、グイグイと引き込まれてしまう。

「血の轍」は、ネットで4巻まで無料だったので、どれどれ1度見てみようかと読み始めてみて、全然思っていたのと違う展開に驚いた。主人公の中学生の少年のいとこが毎週のように遊びにくるのだけれど、その家族と山に遊びに行った時に、そのいとこを少年の母親が崖から突き落としてしまうのだ。1巻の途中でいきなりギョッとさせられる。お母さん(静子)怖いのである。自分の息子を愛して、自分の息子に愛されることしか、もう生きていく楽しみのなくなってしまった母親が、ちょっと度の過ぎた干渉を重ねていく。そして田舎の静かだった色々な人たちの生活が壊れていく。

単行本の各巻の最後に6ページくらいおまけのページがついていて、そこには主人公の少年と静子の昔の日々がアルバムになって載っているのだ。その写真が実に微笑ましい。

うわ、悪趣味。

あれだけのメチャクチャを見せられておいて、最後にこの微笑ましい写真を見せてくる、というセンスがすごい。

麻里は僕の中、は、なんだこのオチは?と思うような終わり方だった。どうなんだろう、今回はしっかり話にけりをつけてほしい。