風紋

外資系のソフト会社 コンサル職のおっさんの日々

晩春


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小津安二郎の名作の1つに数えられる作品。笠智衆が父で、そして嫁いでいく娘を巡る似たような話は、小津安二郎監督の映画にはいくつもあるのだが、その中の代表作であろう。原節子は毎度のように出てくるし、美貌も気品もいうことはないのだけれど、オレは原節子の笑顔が苦手だ。いつもこんなにニコニコしている人がいたら、オレとしては身構えてしまうし、油断できないものを感じるわけだが、原節子はきっとどの映画でもニコニコしているに違いない。監督の指示でそうしていたのだろうから、原節子には何の罪もないのだけれど、いつも「なんだか圧を感じるな」と思いながら見ている。

妻を亡くした男が娘と二人暮らしをしている。

 

(ここから映画のネタバレあり。この映画を見るつもりの人は読まないように)

娘は父が好きだし、父を一人にすることが心配なのだが、父は自分の娘のために縁談をまとめたいと願っている。

「オレのことは心配いらないさ。オレも再婚するから」と嘘までついて、紀子に結婚することを促す。そして娘がいなくなってしまってがらんとした部屋で、父は背中を丸めて自分で丸いリンゴをむく。器用に向いていたのだが、むいていた皮がほろりと床に落ちるところがアップになる。そして父が背中を丸めて動かなくなってこの映画は終わる。見ていてちょっと泣けた。

やっぱり娘がいなくなった部屋は寂しいのだ。とても。

 

ちょっと泣けた。小津安二郎の良さがオレもやっとわかる年になったようだ。