風紋

外資系のソフト会社 コンサル職のおっさんの日々

アリとキリギリス

オレは断然性分が蟻の方で夏場にせっせと餌を集めたりしていて、自分の人生を存分に享楽的に楽しめたのかというと、どっちかというと地味なものだったのではないかと思う。

夏休みの宿題はほとんど7月に終わらせてしまう。小学4年生の時に、小学漢字辞典の漢字を配られたプリントに書き写す、という課題に全員が取り組んでいた。辞典の4年生の部分を書き写したらいいのだろう、ということでオレはさっさと取り組んでいて進捗は学年で1番だった。さっさと終わらせたいのだが、書き込み用に配られていたプリントを全部使ってしまった。なので仕方なく夏休みに小学校にしのびこんで、プリントがしまってあるところからプリントを「盗ん」だことがある。そしてそれに書き込みをするというほどのちょっと頭のおかしいことをする子供だった。

やらないとならないことで、やれることはさっさとやってしまいたい。皿にのっているものでも嫌いなものから食べる。あとは好きなものだけにしてから片付ける、というのが性根としてあるようだ。

やるべきことを見定めて事前に準備をしていく、という種類の仕事とは相性が良かった。アリとキリギリスでいうと蟻の方だよなと思う。

 

息子は同じ血をひいているはずなのだが、宿題はギリギリまで出さない、あるいは最後まで出さない。試験勉強をしないでギターを弾きならしている。やることになっていたものをすぐに忘れて何かに夢中になる。

なんとまあ、体質の違うことか。やらないとならないことくらいしっかりやれよ、と上のような性格のオレはひときわそう思うわけだが、いやなことを後回しにしてそれが残っていても平然としている暮らし方、というのも楽しそうだなと、少しだけだけれどうらやましく思ったりもする。

オレの場合は楽しいはずの旅行や遊びに出かけることすら、消化するべき用事のような色合いに心の中でなってしまっていて、キリギリス的に我を忘れて楽しめているのかというとそうではないような気がしてならないのだ。

だから先々大人になったときに今のような暮らし方では苦労するだろうな、と心配に思いつつも、かといってオレのように自分から自分の人生を味気なくしてしまうような生き方をさせたくもないので、ギターを弾いて楽しそうにしている息子を叱ることはしないし、なんならうらやましく思ったりすらするのだった。