布団から出たくなかった。
空気がトゲトゲしく感じられた。そうだ、とりあえず、硬くなっている背中と腰を柔らかくしよう、と思い立った。電動マッサージで腰を20分くらい振動させて血行をよくした。
血行が良くなる前は、仕事なんかしたくない、なんでオレばかりこんな目に、と、恨みがましい気持ちで不貞腐れていた。しかし、腰がほぐれてきたら、さて、どうしたものか、と前向きな気持ちになってきた。体の調子が悪いと、世界が意地悪なものに感じられてくるのだな、と、自分の変わりように自分でびっくりした。
ツマの肩腰も電動マッサージしてやろう、と思い立った。
ツマも昨夜、夜中に「なんだか、パッとしないなー」と嘆いていた。オレが昨日までの3日間ずっと仕事に閉じ込められていて、あんまり会話もできなかった。家事も何にもできてない。それもあって薄っすら彼女の負担も増えるので、イヤな気持ちにさせているのかなと思ったりしていた。年末年始の旅行の計画もないし。
肩腰が凝っていて、それで頭痛になっているようだった。布団に横にならせて、電動マッサージを背中や肩に当ててやった。やっている間、テレビでサンドイッチマンのコントを流していた。芳根京子の「生旅」も観た。30分くらい肩腰にマッサージ機をあててやった。ぶーん。ぶーん。手が疲れてきたので切り上げた。ツマも元気になってきたとのこと。昨夜は、こたつに入ってぼんやり座っていて何にもしたくない、何にもできない風情だった。パッとしないなーと、そのとき言っていたのだった。そしてさらに
「この家の空気は濁ってる」
と彼女は投げ出すように言った。
しかし、だ。
振動を肩腰に受けたツマは、元気になってきているようだった。
「パーっとしない気分は消えてきた?」
オレは尋ねた。
消えた、と、彼女は静かに呟くように言った。
ここのところ、仕事のせいでほぼ全くハウスキーピングができていなかった。やった方がいいとわかっているけど手がついてないこと、が、あちこちに残っていた。こういうのがたまると、家の風水が濁ってくる、と、オレは勝手に信じている。
ツマが動き出せば家の片付けも進むことだろう。多分