風紋

外資系のソフト会社 コンサル職のおっさんの日々

湯を沸かすほどの熱い愛

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すごい生き方をしている女性の話、と、まずは言えるだろう。余命2ヶ月の設定はもうネタバレにはなるまいから、その前提で書くけれども、残された命の中でやり遂げたことが、あまりにも重くて豊かなのだ。霊柩車を駐車して、彼女に関わった者たちが、楽しそうに会話しているシーンがあるが、つまりそれが彼女成し遂げたことたちなのだ。台詞でいちいち説明しないところが、オシャレだ。

どうしてこのタイトルなのか、何となく漠然と解釈して鑑賞することになると思う。が、終わりまで見ると、深く納得する。物語のこの畳み方もじつに後味がいい。

これはある女性の話であると同時に、家族とは何か、という映画でもある。

素直に正直に思ったことを言い合って、そして一緒に暮らしている人を思いやる、つまり家族らしくしていれば、もうそれが家族なのだ、とこの映画は言っているような気がする。

杉咲花も引っ込み思案だけれども芯の強い子に成長していく様子をよく演じている。

私に母ちゃんの遺伝子、少しだけあった。と、彼女が報告するシーンすら、後で伏線にしてしまうこの作品のそつのない、ある種の意地悪さは、作品に深い味わいを与える。

黒澤明の、生きる、から、余命もの、は色々あると思う。映画のテーマとしてはわかりやすいからだ。しかし、主人公の死後をこれだけ微笑ましく彩った作品は、自分は見たことがない。