風紋

外資系のソフト会社 コンサル職のおっさんの日々

10万円のメガネ

 いわきのメガネ、というメガネ屋さんに昨日寄ってみた。今かけているメガネは安かったからなのか、そういうものなのかわからないけれど、近くを見るのに耐えられない。眼鏡を少しずらしてやらないとパソコンや携帯電話の画面が見られないのだ。使いにくくて敵わないと思っていた矢先に、息子の強度の近眼が発覚。それとともに6万円くらいのメガネに買い換えることとなった。

 高いメガネというのは何が違うのだろう。と、思っていた。息子の目にフィットする眼鏡を作ってくれるということで、アンファンというブランドで眼鏡を作ったわけだが、俺も人生で1度くらいは高い眼鏡を作ってみてもいいかな、と思い始めていた。

 ゼンハイザーの高いヘッドフォーンの実力に驚き、呆れて、そうして思った。人生は長さが決まっている。そんな中で同じ音楽を聴いていて、少しでもそれを多く楽しめるのならば、それは正しいお金の使い方ではないか。お財布が許すのならば、こういうものは高いものを買ってみるべきなのかもしれない。ゼンハイザーのヘッドフォーンは本当に細かい音をしっかり拾ってくれる。音の露天風呂に入っているような心地よさがそこにはある。

 それから、今回のコロナで株価の暴落を予見して少し儲けたところに加えて、そろそろ上がるだろうと逆に買いで入った株の運用がかなりうまくいっている。年収の半分くらいは3ヶ月で儲けた。そのうち上がるだろうとたくさん買い込んでおいたDMPという会社の株が2日連続のストップ高になったり、日産自動車の株を「売り」で入ったその日に、大赤字のニュースで大儲け。そのあとすぐに「買い」に切り替えたら、日産自動車に資金を供与する銀行のニュースで株価は反転、またこれも大儲け。どれも運が良かっただけで、実力とかそういうのではないのだけれど。

 株で大きく儲けが出てくると、これだけ儲けているのに何にも生活に影響させてないんだよな、という気持ちになってきた。それで前から欲しいと思っていたノートパソコンを買おうかな、と思ったりもしていたのだった。が、ノートパソコンを買う必要性なんて別にないのだ。無駄な買い物に終わりそうな感じが漂っていた。

 という中で、メガネ屋さんに行ったわけなので、お店にしてみたら鴨がネギを背負っているようなものだ。

 そんなに高いフレームを買うつもりはなかったのだが、なかなか気にいるフレームが見つからない中、ん!これは似合うぞ、これにしたいぞ、と思ったフレームが異様に高かった。BVLGARIとフレームに刻印されていた。これってブルガリってやつ? お洒落ブランドなのか。んーーー、俺はブランドには全然興味がない。だが、しかし、このフレームをつけている自分を見てしまったからには、他のどのフレームにしても「妥協」となってしまう。

 それからレンズだけれど、どうしてiwakiの眼鏡のレンズは高いのだろう。わからない。どうしてZOFFのメガネのレンズは安いのだろう。わからない。なんで1万円でメガネが作れるのか? ともあれ、高いのには理由があるのかもしれない。まるで自分の体の一部のように使うものだ。サイボーグの部品のようなものなのだ。視野が広くなって、目が疲れにくくなって、思考が前向きになって、株で勝てるようになるかもしれない。

 わかりました、いいです、このフレームで、そしてこのレンズで。

 皮の鞄と、カシオのオシアナス、に続く、仕事用のちょっとカッコつけアイテムの3番目である。

 お店を出たら店員さんがずっと出口で頭をこちらに向けて下げていた。誰にでもそういう風にしている店なのかもしれないし、不意にきてでかい買い物をしてくれたお客さんへの感謝の気持ちなのかもしれない、が、いずれにしてもちょっと偉くなった気分ではあった。

 ヨメは爪に火をともすように節約ライフを貫いていて、高いものなんて全く身につけていない。ので、そういう話を聞いて、面白くなさそうではあった。

 もうノートパソコンを買うことを夢見ることはなかろう。