小森という東北地方にある小さな集落で暮らす、都会から戻ってきた女性が淡々と自然の中で自然を取り込んで料理を作ってそして食べる様子を見せる映画だ。自然の圧倒的な美しさが癒してくれる。橋本愛も飾り気のない芯の強い(そして美しい)女性を好演している。テレビもラジオもない。そういう外部の刺激はほとんどない。それでも、夜になったら窓に蛾やカブトムシがぶつかってくる。
俺の暮らしは人工物まみれ。自分で何かを自然の状態から作るということはほとんどない。自然と切り離されて暮らしていることが、心というものを人が無くしていく事になる原因なのではないか、ということを「『普通がいい』という病」という本で読んだばかり。自然の中で暮らすことは不便もあるし心細さもあるし、色々不便だろうとは思うが、何もかも自分でやらないとならない、ということの中に、生きているという実感もあるのかも知れない。
主人公の女の子は、負けず嫌いで自分でやれないと気が済まない、という設定になっている。お金を手に入れて、そしていろいろなものをお金で手に入れていくという暮らしに浸ってしまっている自分は、だからこそか、生きているという感覚を少し感じにくくなっているのかも知れない。
自転車の修理も、料理も、防寒も、とにかく何もかもを、自分一人でやっているという話は少し漫画ちっくかも知れないけれど、そういう暮らしの中に何か自分で全てやれている人だけが味わえる、自分を感じる幸せがあるのかも知れないなと思った。