風紋

外資系のソフト会社 コンサル職のおっさんの日々

声の網

 

星新一の長編小説。

ショートショートの名手の星新一に長編小説がかけるのか、というと、実際に、この小説は長編小説なのかどうか微妙。

12の小編というか物語が積み重なって1つの世界を完成させている、という変わった構造だからだ。1つ1つの小編は独立した物語になっていて、直接は関係しない。しかし、裏側になにか巨大な仕組みが動いていることはどれも共通していて、その「なにか」を感じながら、次々と章を読み続けていくのが実に面白い。

星新一の最高傑作は「殉教者たち」という話だと思う。「鍵」という作品も素晴らしい。

ただ重層的に話を重ねていって1つの恐ろしいSFの世界を構築したこの作品は、1冊の本としては星新一の最高傑作ではないかと思う。