風紋

外資系のソフト会社 コンサル職のおっさんの日々

世界の終わりとハードボイルドワンダーランド 読了

大学生の頃に読んだ小説だが、自分がなくなってしまうという感覚はまるで絵空事のようで、何にも当時は思わなかった。が、下巻の後半で、主人公が世界の一つ一つを懐かしむように、愛おしく、しかし感傷的になりすぎずに、淡々と終わりを迎えようとしているところを読んだ時、この本は本当に美しいと思った。死ぬことを覚悟した人が実際にいなくなるまでの24時間を、こんなに美しく描けた小説があるだろうか。

最期の章を読んだ後で、この主人公の選択はどんな事を引き起こすのだろうか、と、少し考えたけれどわからない。そんなことはわからないままで良いのだろう。

世界の終わりの方は始まりから終わりまでずっと美しい。ハードボイルドワンダーランドの方は、途中まで冒険活劇だけれど、後半の美しさは、生きていることに対する祝福に満ちている。身体が衰えるこの年齢になって読むと、その面白さはひとしおだ。

生きていることが特別なことだという気づきにあふれている。