風紋

外資系のソフト会社 コンサル職のおっさんの日々

チェンソーマン

少年ジャンプにて連載中の漫画で、アニメ化もされている。ポチタというぬいぐるみのような悪魔と契約することで、チェンソーマンに変身する力を得たデンジという少年が、様々な悪魔と死闘を重ねていく話だ。デンジが戦う動機は、デンジの能力を買っている美女のマキマさんに好かれたいという、わかりやすくて純粋なものだ。

悪魔は、血の悪魔、銃の悪魔など、色々と出てくる。悪魔の種類がもの系のうちは異能バトル的に楽しめたのだが、闇の悪魔、地獄の悪魔、支配の悪魔、と概念というか言葉が悪魔の種類を表すようになってくると、だんだん闘いも観念的になり何が何だかわからない戦闘シーンになり、読み手はついていくのが難しい。だが、概念を見つけてくれば、上には上がある、という少年ジャンプお得意のパターンとすごく相性がいい。うえ、そんな悪魔があるのかよ、と、話に付き合っていけば見たことのない世界に連れて行ってもらえる。

 

人に読むことは薦めないが、俺はこの漫画が大好きになった。脳が刺激される。

話の展開はひたすらに俺の予想を覆しつづける。マジかよ、嘘だろ、だけで話が出来ていると言ってもいい。まるであえてこちらの想定を裏切ることが目的であるかのように、全く先が読めない。ずっと話の展開にびっくりさせられてばかりだ。何ひとつ、俺の思っていた通りに進まない。それがめちゃくちゃ気持ち良い。

予定調和とか、お約束、と呼ばれる、物語を心地よいものにするためにある、律のようなものを、まるでそれを壊すことが目的であるかのように進む。大事な人たちが死にまくる。しかも予想不能なタイミングで、予想不能なかたちで。それを見るたびに息が止まる。

だから不快なストーリーになるし、伏線もなにもない。突然いろいろなことが起きる。人間も数えきれないほど死ぬ。登場人物には何故か感情移入しやすいようになってるので、その理不尽な展開で脳がしびれる。え、この人、こんな風に物語から退場するのかよ、と。

この漫画の気持ちよさは、まるで人生のようだからだと俺は思う。

先の読めない展開と、何の慈悲もない残酷さ。悪魔と呼ばれる魔物と実生活で戦うことはないが、我々の日常には、明日には何がどうなっているのかわからないような危うさだらけで、そこに悪魔のようなものを俺は感じる。貧困の悪魔、不公平の悪魔、不義の悪魔、戦争の悪魔。

チェンソーマンを読んでいると、脳みそが刺激されまくって何だか眠っていた頭脳が揺り動かされたような感じになる。俺はとても楽しく読めたが、人には薦めない。