風紋

外資系のソフト会社 コンサル職のおっさんの日々

惡の華

アニメでなんとなく一話だけ見てみて気になったので、漫画を6巻まで借りて読んだ。チェンソーマンのメチャメチャ展開を読んだあとなので、普通のマンガの起こりうるだろうことを描いた納得の展開は、これはこれで気持ち良い。

中学生がクラスの憧れの女子の体操着を思いがけず盗んでしまうことになり、そしてそれを仲村というクラスで問題児とされている女子が目撃したことから物語は動いていく。

若い頃の性の芽生えとその混乱の話のような部分と、地方というものにある、その閉塞感と息苦しさをテーマにした漫画で、ずっとある地方に思春期の頃閉じ込められて暮らしている人たちは、何か独特のストレスを抱え込んでいるのかもしれない、と思わせられる。その問題児の女子は、そこから出ていきたい自分と、出ていけない自分の中で、何かを突き破りたくて、男子を脅迫していく。

体操着を盗まれた女の子は初めは被害者なのだが、犯人が誰であるのか、そして仲村さんが後ろにいることを知り、彼女もまた自分を閉じ込めていた殻を壊して闇の部分を物語の中に広げていく。

 

この話の主人公は実はその閉塞した土地であり、それを良しとして暮らしている無批判な人々たち。漫画はそれをほとんどさらりとしか描いておらず、登場人物たちのからみあいが話を進めていくのだが、アニメはもっといやらしいほどにその閉塞感や退屈さ、放置された町、という気配を、何度も放置された毎日の景色を画面に流すことで強調している。うまいアニメ化だと思う。

作者も単行本の欄外にモデルになった実在する町の写真を載せている。

これは人の話である前に、町の話。