柳沢きみおは「翔んだカップル」という漫画でデビューしたラブコメの元祖。多作を誇る作家で、特命係長只野仁の原作者だ。独特のリアリズムと、オリジナリティの高い心理表現がちょっと好きなのだが、登場人物がギラギラしていることが多くて、すぐにSEXシーンが出てくる。この人の漫画を読むと誰も彼もが幸せを求めて女のことばかりを考えているのと、必ず説教くさい人物が出てきて人生について語るので、嫌いな人は嫌いだろうと思う。
その反動でかまったくエロシーンがない、ただ異様に説教くさい漫画がこの大市民のシリーズだ。世相を反映したリアルタイムネタが多く(巨人が勝ったとか)週刊誌に載っている漫画としては面白かったのだろう。が、もう30年くらい前の話なので、よくわからないな、と思いながら読む。
作者の人生観や価値観を主人公の山形氏に語らせる形式で、なるほどそういうものかと思いながら読むこともあるだろうけれど、いささか作者の愚痴をただそのまま聞かされているようで、もう少し間接的に読み手がそのメッセージを感じ取るような表現はなかったのかなとも思う。
AmazonのUnlimitedで昔の漫画が読み放題なので、いいのを見つけると、普通は読めない本が置いてある漫画喫茶に入ったようで少し幸せだ。お金もかからないし。