風紋

外資系のソフト会社 コンサル職のおっさんの日々

ルビンの壺が割れた

 宮本輝の名作「錦繍」を彷彿とさせる書き出し、男女の書簡型の小説なんだなと興味を惹かれる。本屋さんでもいいところに表紙を見せるようにして並んでいるし、これは面白いミステリーものかもしれないと思って本屋で買ってしまった。

ルビンの壺が割れた

ルビンの壺が割れた

 

 1時間くらいで読み終わるし、1000円くらいの本だったので被害は小さかったが、これはちょっとひどい本でした。

 オチを考えると、この男女がメールを交わしていることが不自然に思えてくるのだ。これは書簡型の小説にしたことが失敗しているということで、弱点としては致命的だ。途中から登場人物のいずれにも感情移入できなくなる。嫌いになるから、ということではなくて、書簡を書いている人物像が豹変するからだ。今までメールを書いていた人と全然違う、ということのもたらす戸惑いを置いたままにして、物語は終わる。

アマゾンで評判を見てから買ったらよかった。そうしてアマゾンの評価というのもなかなかあてになると思った。評価は★3つ。それほどの酷評の嵐でもないけれど、けなしている人はかなりけなしている。

 宣言する。我が家もそうであるように、この本はあっという間にBOOK-OFFに出回ると思う。ので、それを待ってから買ったほうが良い。手元に残しておくかわいい大切な本には、なかなかなりえないと思う。イニシエーションラブ(乾きみこ)を読んだ時の衝撃と感動を100としたら、この本のオチは36くらいだ。

 新潮社、どうした? こんな本を強く売り出してしまっていいのか? ブランド力が一気に低下したと思うぞ、この作品を強く宣伝したせいで。新潮社が売ろうとするものはこれからは慎重に手に取るようになるだろう。