これは俺が20代の頃に何かがつらかったときに、ホテルのレストランでミルフィーユを見ながら思いついた理論だ。ミルフィーユは薄い生地を幾層にも重ねたケーキのようなお菓子だ。
このお菓子は、1番上の層しか外側には露出していないのだが、それを剥がすと次の層が出てくる。
これは悩みも似たようなものではないか。
1番気になっている悩みや不安を解消すると、今まで2番目だった悩みが昇格して1番めの悩みとして立ち現れてくる。それをクリアすると今度は次の悩みが出てくる。
たとえば、ひどい頭痛の間はそれが治ることだけを願う。治ると今度は、子供の受験のことが気になりだす。受験が終わると目減りしてきていた預金が気になりだす。あるいは職場の人間関係、など。
悩みには果てがないのだ。
後から後から悩みのタネが後ろから出てくるからだ。
これがミルフィーユ理論だ。
人は二つのことで同時に悩むことは結構難しい。そして悩みのタネはいくらでも次々と現れる。
次々と出てくる悩みと戦い続ける生き方もある、が、身体の力を抜いて水に浮かべてしまうように、わかったもう降参だ、と悩みを受け入れてしまう生き方もある。ミルフィーユ全体をだ。悩みはどれもがその核に、欲望を持っているので、それを放棄してしまうということだろうか。
それからもう1つは新しい悩みで古い悩みを包んでしまう方法だ。
大きな問題、いじめ問題や、地球の問題、などで心を忙しくすると、自分の悩みは自然に2番目以降の問題に後退する。