森見登美彦の小説なので、舞台は京都で独身の大学生が恋心をこじらせながら奔走する話だ。だいたいいつもそうだし、それでよい。無駄に饒舌で、変にこだわりが強く、そして理屈っぽい。周りを変な人たちが固めている。
水森さんという女性に振られてしまった主人公がその振られてしまった理由を確かめるために、水森さんにまとわりつこうとする話なのだが、肝心の彼女は本を半分読んだ今のところ出てきていない。
言葉の選び方と、森見登美彦節としか表現できない音楽的な読みやすさは相変わらずだ。物語自身はそういうわけなのでちっと前に進まずに空転し続けるのだが、その空転を楽しむのが彼の小説なので仕方ない。
瀬尾まいこ、村上龍、森見登美彦、と続けて読んだが、世界観も文体も書きたいことも違う、ごちゃごちゃ感が心の中で混ざり合って「世界は広い」という感覚を醸し出していてなんだかんだと癒やしの効果をもたらしている。