夜は短し歩けよ乙女

森見登美彦の小説。ブックオフで220円だったので、試しに買ってみた。

彼の小説はお話そのものにはいまひとつカタルシスがなくて、この先どうなるのだろうか、とドキドキしたり、登場人物にいたく共感したり、腹を立てたりすることがない、というのがお話として微妙なのだが、それを補って余りある語り口が心地よい。その語り口に身を任せて、文字を音として読みながらそれに酔いしれるのが彼の小説の楽しみ方だと思う。「恋文の技術」もそういう風にして楽しく読んだことがあった。

黒髪の乙女が京都の夜の街を闊歩して、そして彼女に惹かれるある男(先輩)がその彼女の気を引くために奮闘努力する話だ。話としてのリアリティは薄くて、やはりSFに近いテイスト。なのでどういう展開になるのか読んでいてわからない。電車の中に巨大な屋敷が入っていたり、天井にコタツがついていたり、自由奔放である。

 

文字で読ませる娯楽だということをよくわかって計算して書かれている小説なので、そのサービス精神にうっとりである。

一人称が、黒髪の乙女と、先輩とで交互に入れ替わる構成も新鮮だが、その切り替わり方が鮮やかである。

先輩が「地獄のようだった」と書いた直後に、乙女が「天国のような」と対比させて綴るその落差と切り替わりが面白い。よく計算されているなと思う。

 

半分まで読んだところなのだが、読んでいて2回も「ガハハ」と笑ってしまった。ありがたい気分転換である。

 

 

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)