まあ塚地武雄の演技力は誰が見ても文句なしであろう。本物の自閉症の人にしか見えない。それは、まず言いたい。
家から伸びている梅の木の枝が通路にまでのびてしまっていて、界隈に迷惑をかけている。しかし、自閉症の息子につきあっているうちに枝を切り損ねてしまった、母子家庭の話だ。家の近くに引っ越してきた家族とは、最初はいろいろと揉めるのだが、次第にこの家族とも親しくなっていく、という話だ。
自閉症の「忠さん」は挙動は他の人と違っていて、すごく異物感がある。初めのうちは見る側も「気持ち悪い」という印象を抱いてしまうと思う。しかし見ているうちに、彼の純粋さ、人を決して攻撃しない優しさ、そういうものに気づかされる。そうして映画が終わる頃には、彼のことがそんなに嫌いではなくなっているのだ。彼自身は全然変わらないのに。
この変化は、家の近所に引っ越してきた家族の心情の変化ともシンクロしていて、なので仲良くなったのを見るとそこにカタルシスがある。ああ、良かったな、と思う。
母子家庭で、加賀まりこが死んでしまったらどうなるのか、などの不安はそのまま残るのだけれど、なんとかなるのかもしれないなという温かい予感を残して映画は終わる。