風紋

外資系のソフト会社 コンサル職のおっさんの日々

永田カビ 一人交換日記

 

 自分から自分への交換日記のかたちで、身の回りにあったことをありのまま、苦しい心の病気から抜け出していくまでの時間をありのままに描いていく。

永田カビの一連の作品はどれも基本自分に起きていることを赤裸々に描いていて、読んでいて息が詰まる。つらさの救済として、描くことで何か彼女自身にとっての救いになった部分もあるかもしれないけれど、描かずにいられない何かもあったはずだけれど、それをさしひいても読んでいて痛々しい。作中の彼女は泣いてばかりいる。そうして泣いてばかりいる自分を描くことで、彼女を取り巻く周りの人たちについても描かざるを得ず。彼女が可哀想でならず、読んでいて「俺が友達になってあげるのに」と何度も思った。読みながらそう思う人は多いと思う。

私小説、と呼ばれる分野になると思う。自分自身の裏側や通常人に見せていない部分を人に見せることで人を楽しませようとする危険な創作物で、自分のつらさを描くことでさらにつらくなる、ということがあるので、読んでいて永田カビが少し心配になった。

それはそれとして、彼女の苦しいほどの、寂しさは、それと似たようなものを多かれ少なかれ抱えている我々にとっては、すごく共感できるものだし、そうしてその寂しさを乗り越えようとする姿は続きの気になるドキュメントだ。彼女の苦しんでいる話は、自分の苦しんでいる話でもあるからだ。

そうして2巻の終わり(最終巻)にて、彼女はどうにかウツの世界から脱していく。そのために彼女のしたことは、同じような苦しみを抱えているわれわれにとっての光明だし、実際に参考に出来る知恵だと思う。永田カビが無事に心を立て直せたので、創作物としても安心して読み終わることが出来たし、ハラハラしながら彼女の戦いにつきそってきた「仲間」としてもほっとすることが出来た。