ヒッチコック監督の有名な作品。物語のひねりも構造もとてもよくできていて、見終わった後の気持ちよさがすごい。
【以下、ほんのりネタバレ入ってます】
男が、金持ちの浮気している妻を殺そうと、古い友人を雇って殺人を依頼するのだが思いがけないことになる。殺人を依頼した男の体格も姿勢も良く、殺人を依頼しているシーンでは依頼されている男が触れたものをもれなくあとから1つ1つ指紋を拭き取っていく、彼の抜け目のなさを表す演出がみごと。そして殺人の計画は彼の思惑から外れて、思いがけないことになってしまう。だが、それをリカバリーして、さらにその展開を逆手にとっていくようすは「おまえ、悪いやつだな~(褒め言葉)」とテレビの前でいわずにいられない。
この殺人計画のほころびとその見事な軌道修正が面白いのだが、忘れてはならないのはグレースケリーの美しさだ。完璧な美人だ。わざとかどうかわからないが「美人妻」という役柄にぴったりで、変なクセや特徴もない。美人だなあ、と感心してその美貌を楽しみながらも余計なノイズが生じない。その美しさが記号的なのだ。ヒッチコックのサスペンスを邪魔しないという意味で完璧だと思う。
ダイヤルMというタイトルから電話が鍵を握る作品かと思っていたが、"M"で始まる番号をかけたというだけで特に深い意味はなかった。
西洋の電話機には数字にアルファベットがついていて、そのアルファベットの組み合わせで数字を覚えておくのを助けるような仕組みになっている。
229 と覚える代わりに 数字と一緒についているアルファベットを組み合わせて "BAY"(港)と覚えておくような感じか。日本語の語呂合わせだと「にんにく」とかいって覚えると思うが。
ダイヤルMは "6"で始まる番号、ということになるのだろう。あとは殺人 "MURDER"の頭文字の"M"に注目して、ダイヤルM、と呼んだのかもしれない。
「だいやるえむ」という響きが気に入ったのか、寺尾聰もこれをタイトルにした歌を作っている。この映画とは全然関係ない。誰も殺されないし。
オレはこの曲が大人っぽくて好きなので、ついでということでよかったらこちらも聞き流してみてほしい。